マダニ

東京慈恵会医科大の嘉糠洋陸(かぬか・ひろたか)教授(熱帯医学)

 マダニは全国の野山に生息し、1ミリ以下から1センチ近いものまでさまざまな種類がいる。普段は日陰に潜んでいるが、血を吸おうとするときには葉の先端などに出てきて動物を待ち構え、においや体温、呼気に反応してとりつく。かみつくと24時間ほどで、唾液中の接着成分で口を人の肌に固定し、そのまま1~2週間血を吸い続ける。唾液には麻酔成分も含まれ、痛みやかゆみがないのでホクロと間違える人も少なくない。

「かみつきやすい場所を探して2~10時間ほど体中を動き回る性質があるので、家に帰ったらすぐ入浴して服を着替えると効果的。また、とりついたマダニを無理に取ろうとすると、ウイルスなどを含んだ体液を逆に肌に注入してしまう恐れがある。かまれたら何もせず医療機関へ行くことが大切」と話す。

 マダニが媒介する感染症には、他に日本紅斑熱やライム病もある。ダニの仲間ではツツガムシが媒介するツツガムシ病も有名だ。これらは細菌が原因で有効な抗菌薬があるが、SFTSと同様に原因が分からないまま事態が悪化し、亡くなる人が毎年後を絶たない。

  ■新マダニ感染症などの予防方法■

<野山に出かける時>

・長袖、長ズボン、帽子、タオルを首に巻くなどして肌の露出を少なくする

・袖口やズボンの裾を縛るなど隙間(すきま)を塞ぐ

<野外から帰ったら>

・すぐにシャワーを浴びるか、風呂に入る

・服を着替える

<マダニなどにかまれたら>

・無理に自分で取ろうとせず、そのまま医療機関を受診する